リサイクル材をかっこよく見せる。デザインの力で美意識変えたい。

隈 研吾

今春、「やさしい物達」と題した現代アート展を都内で開こうと、準備を進めています。きっかけは、あるリサイクル材との出合いでした。それは、新聞古紙を再利用して作った断熱材です。インキのにじんだような灰色で、普通なら、壁の中で人目に付かないように使われています。

でも、僕はそれをぜひ「見せたい」と思ったのです。触った感じがなんとも言えず、やさしい。気持ちよくて、いつも触れていたくなる素材なのです。個展では、この断熱材をはじめ、リサイクル材を使った美術作品を紹介するつもりです。

今、人と物との関係が変りつつあります。物をどんどん作り、作っては捨てる時代は終わりました。今そこにある物を大事に大事にする時代になったのです。時間がたって物が傷んできたら、もう一度、再生させる努力をして、長く長く使っていこうという時代なのです。

リサイクル材の多くは、灰色で色もまだらです。白くて均一なものが美しいという現代の美意識の中では、決してきれいとは言えません。でも、自然の中に白くてピカピカなものはありません。もともと日本人は、粗末でひなびた民家に味わいを感じていました。体の近いところに、こうした味のあるものを欲しているのです。

デザイナーの役割は、デザインの力でこうした本来の感性を呼び覚まし、ピカピカでないものはきたない、という美意識を変えることです。デザインを工夫することで、それが可能だと思っています。きたないけれど我慢して使う、というのではなく、色のまだらを、かっこいいと思わせることこそ、デザイナーの力量です。

ただ、品質が均一でない天然材やリサイクル材を建材に使うと、クレームになりやすい面もあります。建築家がピカピカの人工材を使いたがるのは、クレームが怖いというのが本音です。

確かにリサイクル材は、新品に比べ、強度に劣る場合もあります。建築家には、こうしたリサイクル材の欠点を補いながら、安全性を高める知恵も必要です。そして何よりも大事なのは、家主との信頼関係を築くことです。新品に頼るのは、かつて当たり前だった家主と大工との間の信頼関係が失われていることの裏返しでもあります。(談)

日経エコロジー2006年2月号

 

工場閉鎖の危機を救った廃材活用。月2000万円弱のコスト削減実現。

「今では廃材の利用で収益性が格段に向上したが、一時は工場の存続も危ぶまれた」。INAX伊賀上野工場(三重県伊賀市)の久田雅教副工場長は、かつての危機を振り返る。

主にビル用外壁タイルを生産していた同工場は、1990年代のゼネコン不況で赤字が続き、工場閉鎖も検討された。需要の低迷に加えてタイル生産の歩留まりの悪さも重くのしかかったためだ。97年当時、不良率は6%以上で毎月約320dの廃材が発生、これは約2000万円分の原料ロスに相当した。これに埋め立て処分費が月に約145万円加わる。

この悪循環を断ち切ったのが、ビル用から住宅用への製品の切り替えと、廃材の活用だった。9710月から外部の産業廃棄物の受け入れを開始した。98年春に発売した住宅用外壁タイル「ジオクラシコ」は、工場内外の廃材を最大70%使用しながら不良率を1%以下に低減。これは、「逆転の発想から生まれた」と久田副工場長は説明する。

それは、不均一さを商品の特徴に生かすという発想だ。通常の外壁タイルは、横幅のバラツキを±2mm以下にしなければならない。廃材を原料に混ぜると成型しにくくなるのでバラツキが増え、不良率は大幅に上がってしまう。だがジオクラシコは、古いレンガ調の不均一な肌合いが特徴なので、±6mmと従来の3倍までバラツキが許された。

伊賀上野工場が利用する廃材は、工場内の生産ラインで発生する汚泥のほか、成型時や焼成時に生じる不良品がある。このタイル廃材は、粘土や長石の配合率に違いがあり、この違いを考慮して調合する必要があるので7種に分別している。昨年でタイル廃材は月50d程度発生し、約9割を原料の代替に用いた。焼成後のタイル廃材は粉砕しにくいので、前処理工程で粒径1mm以下にする。

また、外部からも約10種の産業廃棄物を受け入れる。その量は月に約230dに上る(昨年実績)。重量比で8割強は、窯業原料の採掘時に生じる廃材。残りは、液晶テレビや板ガラスの工場から出るガラス類の廃棄物が1割弱、下水汚泥の焼却灰が1割弱になっている。

採掘時の廃材はバージン原料の半値、板ガラスや焼却灰は10分の1程度で購入するが、液晶のガラス基板は処理料金を得て受け入れる。ガラス類は、2.5mm角程度に粉砕する。

これらの廃材にバージン材と水を混ぜ合わせ、粉砕・製粉するなどして、粒径0.7mm程度の原料に仕上げる。ここでは配合率が重要で、「ガラス分を増やすと粘度が落ちて成型性が悪化するので、粘り気の高い材料を加える」

また、これらの工程には2、3ヶ所のチェックポイントが設けてある。最初に少量を工程に流し、材料の成分を分析・確認してから100d規模で製粉する。

次に、プレス機で250300kgの圧力をかけて成型する。表面に自然な凹凸を出すために、常識では禁じられている、プレスを二度繰り返す方法で、タイルの角を欠けさせる。続く加飾工程では、通常よりも粘度の高いうわぐすりをタイル表面に塗って凹凸を滑らかにし、粉体のうわぐすりをまぶしてからブラシ状の機械でこすってなじませる。これを最高で1200℃強で焼成すると、廃材を利用した外壁タイルが出来上がる。

日経エコロジー2006年4月号

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