公開技術詳細

整理番号 st001
技術の名称 ナノ粒子鉄に水素を貯蔵した燃料電池
研究担当者 東京工業大学大学院理工学研究科応用化学専攻 教授  大塚 潔
技術の概要 酸化鉄を水素で鉄まで還元し、水素を必要とする燃料電池車に搭載あるいは家庭用電源に設置する。カセットに水を注入すると純粋な水素が発生するので、これを燃料電池のアノード側に直接導けば良い。現在の燃料タンクと同等のスペースで500qの走行が可能となり、しかも高圧の水素タンクと比べて安全性がはるかに向上する。燃料電池車を500q走行させるのに必要な水素は5sと言われる。重量比で約5%の水素を貯蔵できれば100sの鉄で済む。密度2.8、充填率70%で試算すると、鉄を納めるタンクの容量は50g程度に納まる。
開発の目的 以上の方法で水素を貯蔵し、運搬し、発生させるために最も重要な技術は、水素を取り出す反応が低温(<400℃)で速やかに進行するように、出来るだけ細かい酸化鉄(または鉄)の微粒子(ナノ鉄粒子)を調製することである。
構成する
技術要素
・硝酸鉄水溶液中に尿素を加えて加水分解させ、鉄を沈殿させる「均一沈殿法」を採用すると、粒径30nm程度の微粒子が得られた。
・ナノ鉄粒子は高い水分解性を示すが、繰り返し使用すると焼結が激しく使い物にならなくなる。水酸化鉄の沈殿の際に、他の金属の塩を少量添加すると、これらの酸化物が表面に担持され、焼結を防ぐのみならず、水素発生時の触媒の役もする。
・水素発生媒体としての鉄粉を高密度化するために、鉄粉を圧縮成形してペレット化した。これにより取扱い性が格段に向上したのみならず、水素発生時の発熱が内部に蓄積し、より低温で水素を取り出すことが可能になった。
・Rh、Ir、Ru、などの白金族元素を0.7モル%〜3モル%添加した酸化鉄微粒子を5mm程度の大きさのペレットに加工したものを使用すると、反応温度200℃で4.8wt%の水素が発生することを確認している。
研究の背景
及び動向
水素を運搬・貯蔵する手段としては大きく分けて3つの方法が提案されているがそれぞれ難点があり、決定的なものは確立されていない。すなわち、水素ボンベは最も簡便な方法であるが700気圧の高圧にする必要があり、安全性の面から問題がある。有機ハライドを利用する方法は反応時に多量の熱の出入りがあり、異なる場所で行う場合の熱バランスが大きな問題となる。さらに、メタノールを運搬手段にする場合も、現場で分解して水素を得る時の装置が大掛かりになるばかりでなく、発生したCOの除去も問題となる。
技術の優位性 ・現行の燃料タンクの容量(50g程度)で500qの走行が可能となり、しかも水素吸蔵合金に使用するチタンなどに比べて、はるかに安いコストで水素の貯蔵が可能。さらに材料は無尽蔵にある。加えて、水素を高圧ボンベに蓄えておくことに比べれば、安全性も高い。
・燃料電池ではCOが触媒毒となるため、供給する水素には極低濃度のCO含量が要求される。メタノールなど炭化水素系燃料を水素源にすると、このCO除去がネックとなる。その点、本法では炭素を全く含まない系での反応なのでその心配が無い。
NInTAC
への要望
燃料電池車に積む水素運搬装置への応用については既に数社と共同研究を行っており、新たな企業開拓にはそれらの会社の諒承を取り付ける必要がある。それよりは、個人的には、水素の運搬・貯蔵の安全性を生かした、従来の水素ボンベの代替手段としての装置を開発する企業を探して欲しい。

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